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2007年5月の記事

2007年5月28日 (月)

願いはひとつ

 私はなぜ、これほど公益法人やNPO法人に関心を持ち、語っているのでしょうか。

 今(に限らず、昔からも)、企業社会では様々な問題が起きています。目先の利益に目が眩んだ経営者による不正会計や粉飾決算、賞味期限の過ぎた食品を使った消費者の裏切行為、格差(いわゆるワーキングプア)や、まるで紙切れのように切り捨てられていく労働者、・・・・・・数え上げればキリがありません。

 企業社会で起きているこれらの問題は、基本的には経営者の資質に関わるものと私は考えますが、このような問題が、公益法人やNPO法人の世界では、決して起きて欲しくないと思うのです。

 それは、公益法人やNPO法人が、取りも直さず「非営利」の組織(つまり非営利組織とは、見返りを求めない組織のことであり、ここで言う「見返り」とは、剰余の分配に与ることを言います。)であるからです。すべてはここに集約されます。

 しかし、残念ながら、公益法人やNPO法人にも様々な問題が起きているのが現実です。

 公益法人は官製談合の温床となり、不正会計や使い込み、経営者による私物化がまかり通っています。NPO法人も詐欺まがいの行為に利用されたりしています。

 株式会社では、その恩恵を受けるのは株主ですが、公益法人やNPO法人では、その活動の恩恵を受けるのは、一般市民です。それはなぜかというと、公益法人やNPO法人は原則として税金が免除されているため、その分間接的に、国民の税金が犠牲になっている、つまり、一般市民が公益法人やNPO法人の活動の一部を援助しているのと同じなので、一般市民にも当然その権利が存在します。逆に言えば、公益法人やNPO法人には、究極として、一般市民に恩恵をもたらす義務が存在するものと考えます。

 したがって、株式会社の監視機能を果たすのは出資者である株主だとすると、公益法人やNPO法人の監視機能を果たすべきは、その構成員はもちろんのこと、間接的な援助者である一般市民でなければならないことになります、よね。

 ですから、私は、公益法人やNPOに携わっている人たちだけではなく、広く一般市民にも、公益法人やNPO法人のことを理解していただきたいと思っているのであります。

 特に、私の経験から言って、公益法人やNPOに労働問題は起きて欲しくないです。もう目も当てられなくなってしまいます。

 そのためには、やはり、公益法人やNPOの法律、会計、税金、その他管理運営上の諸制度について、広く知識を共有できるようにしたいです。

 このブログが、そのための一助となることを信じて、できる限り書き続けたいと思います。

 

 

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2007年5月11日 (金)

すべては収支計算書に始まり、終わる・・・

 前回と前々回で、公益法人とNPO法人の会計構造の一端と収支計算書について触れ、前回の最後で「収支計算書からは永遠に逃れられない」旨の記述をしました。

 では、なぜ、公益法人やNPO法人は、収支計算書から逃れられないのでしょうか。

 収支計算書から逃れられないのは、公益法人とNPO法人だけではありません。社会福祉法人や、学校法人といった他の(広義の)公益法人でも収支計算書は存在し、これが廃止されるという話はまだ聞きません。おそらく、これからも公益法人は貸借対照表、損益計算書(正味財産増減計算書)とは別に、収支計算書の作成は続いてゆくのではないかと思います。

 それはなぜでしょうか。

 筆者は、その理由は大きくふたつあると考えています。

 ひとつには、公益法人の指導・監督を行う行政側が、法人の実態を把握するのに分かりやすいから、ということが言えると思います。

 今でこそ貸借対照表や損益計算書を行政でも作ろうという動きが出てきて、多少は理解があるのでしょうが、基本的には行政は歳入・歳出をお金の出入りのみで考えていて、企業会計では費用に計上されない固定資産の購入を歳出に、収益に計上されない借入金(行政の場合は債券が一般的でしょうか)を歳入に計上します。そして企業会計上の費用である減価償却費は歳出に計上することはありません。つまり言ってみれば歳入・歳出はお金のやりくり、資金繰りの結果であるといえます。ですから行政が作る予算も、企業のような収益・費用の予算ではなく、お金(資金の)やりくり、収支予算になります。

 このような方法で行政はずっと資金の管理をしてきたので、極端に言うとこの方法しか知らないため、監督をする法人を把握するのにもこの方法で行うと非常に分かりやすいのです。

 したがって公益法人が行政の監督下にある限り、収支予算、収支計算は要求され続けると考えられます。

 そしてもうひとつの理由は、公益法人の本質が、非営利(さらに言えば、これに加えて公益)であるということにあると思います。

 営利、非営利の問題については今後折に触れて述べることになると思いますが、企業を代表とする営利法人は、利益を追求した結果得た剰余金を資本主である構成員(代表的なものが株主。場合によっては利害関係者、役員や従業員も賞与などの形で分配の対象に含まれることがあります)に分配することを目的としているので、最終的にその分配可能な剰余金はいくらであるかを計算することが企業会計のひとつの大きな目的でもあります。

 これに対し、公益法人(非営利法人)は、剰余金の分配が目的ではないので、当然、公益法人の会計の目的の中には剰余金の計算はありません。

 では、公益法人の会計の目的は何か、言い換えれば会計上、公益法人はどのように扱われているかということです。

 経済活動は、大きく生産と消費に分けられますが、主に生産を担う経済単位すなわち企業の経済活動をその対象とするのが企業会計とされているのに対し、主に消費を担う経済単位すなわち行政(官庁)や家計に関するものは消費経済会計であると一般には考えられています。

 そして公益法人は、伝統的に、官庁や家計と同様、消費経済体であると考えられてきているのです。

 先ほど少しお話しました官庁(行政)は、国民から税金を集め、そのお金をどのように使うかが毎年の命題であります。その使い道をめぐっては、無駄遣いだ何だと、盛んに報道され、毎年国民を巻き込んだ大論争が起きています。

 家計でも、自分の生活を考えれば分かると思いますが、働いて会社からもらう給料や報酬を生活のために使います。

 公益法人も、会員からの会費や、寄附、行政からの補助金や助成金、資産の運用収入や事業によって得た利益は、構成員や利害関係者に分配するのではなく、社会貢献活動を行いその法人の本来の目的を達成するために使います。

 つまり、消費経済体においては、剰余金(損益)の計算よりも、どのようにそのお金を使ったか、お金の使い道を把握することの方が大事なことであることがお分かりいただけるのではないかと思います。

 だから、お金の使い道の計算、すなわち収支計算は公益法人から切っても切り離せないのであります。

 ただし、この考え方も、少しずつ、変わりつつあります。そのことについては、また改めます。

 

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2007年5月 2日 (水)

一つの取引で、二つの仕訳

 公益法人会計やNPO会計の解説書を読むと、収支計算書のところで、「資金の範囲」、「資金の範囲」と盛んに叫ばれます。これが何を意味するかは、前回に述べましたが、今回は、収支計算書で筆者の頭を悩ませた「一取引二仕訳」について少々語りたいと思います。

 昨年4月から導入されている新しい公益法人会計基準では、収支計算書が財務諸表から除かれたために、基本的にはなくなりましたが、まだ何らかの事情によって旧会計基準により処理をしている法人、そしてNPO会計で収支計算書に「正味財産増減の部」を設けている法人においては「一取引二仕訳」を行っている法人が多いのではないでしょうか。

 企業会計は貸借対照表と損益計算書によって成り立っているのに対して、改正前の公益法人会計は、収支計算書・貸借対照表・正味財産増減計算書の3つの計算書類によって成り立っていました。そしてこの3つの計算書類を互いに連関させるために編み出されたのが「一取引二仕訳」(人によっては「切返し仕訳」「交差取引」などとも言います。)です。

 これはどういうことかと言うと、収支計算書では資金の収支(増減)しか計上しませんので、いわゆるストック式の正味財産増減計算書を用いて資金の収支(増減)と資金以外の資産および負債の増減とを調整して、貸借対照表と整合させる手法です。

 具体的に説明すると、通常の費用支出はいいのですが、例えば備品などの固定資産を購入した場合、普通は単なる資産の交換取引(資産の運用状態の変更)なので、正味財産(純資産)には何ら影響しないのですが、購入によって資金は減少しますので収支計算書には「固定資産購入支出」を計上します。この資金の減少だけを貸借対照表に当てはめてしまうと、本来は関係ないはずの正味財産(純資産)も減少してしまうので、ストック式の正味財産増減計算書の「増加の部」に、その資金が減少した分だけ「固定資産増加額」を計上して、正味財産(純資産)に増減が発生しないようにするのです。負債についても同じで、例えば長期の借入をした場合、普通は正味財産(純資産)の増減は伴わないのですが、借入をした分資金が増えるので、収支計算書には「長期借入金収入」を計上します。これをそのまま貸借対照表に当てはめてしまうと正味財産(純資産)が増加してしまうので、ストック式正味財産増減計算書の「減少の部」に「固定負債(長期借入金)増加額」を計上して正味財産(純資産)には影響しないようにするのです。

 つまり、仕訳を示すと、まず固定資産(備品)購入の場合

  (借)備品購入支出    (貸)現金・預金

  (借)備  品        (貸)備品増加額

 次に、固定負債(長期借入金)の場合

  (借)現金・預金       (貸)長期借入金収入

  (借)長期借入金増加額  (貸)長期借入金

といったように、ひとつの取引でふたつの仕訳を起こすことになります。

 ここで「ストック式」という言葉が出てきますが、旧公益法人会計では二通りの正味財産増減計算書が認められていて、それぞれ「ストック式」と「フロー式」と一般に言われています。

 どう違うかと言いますと、「ストック式」の正味財産増減計算書は、前述のような、いわば収支計算書と貸借対照表を連結させる役割を果たす方式で、「フロー式」は、損益計算書のような発想で正味財産(純資産)の増減を計上します。どちらの方式を採用するかは、法人が任意に決めることができます。

 では、「フロー式」の正味財産増減計算書を採用した場合、収支計算書と貸借対照表の連関はどうなるのか……?

 「フロー式」の場合には、企業会計と同様に、正味財産増減計算書と貸借対照表のみが連関し、収支計算書は他の計算書類とは関係なく、ただ資金の収支のみを計上することになります。

 では、「フロー式」を採用した場合、収支計算書は、どのように計上・作成するのか……?

 この場合には、日々の取引発生の都度、資金の収支に関係する取引の場合にはその都度収支計算書に計上していくことを積み重ねて作成するのが一般的です。そして、収支計算書への計上を仕訳によって処理する場合には、ひとつの取引で通常の仕訳のほかに収支計算書に計上するための仕訳を行います。言い換えると、一取引で、二系統の仕訳を起こします。

 ただし一部には、決算処理によって収支計算書を作成する法人もあるようです。

 新しくなった公益法人会計基準では、収支計算書を対象から外し、正味財産増減計算書は様式を変更しましたがいわゆるフロー式に統一しましたので、「一取引二仕訳」や「一取引で二系統の仕訳」はなくなったはずでした。ほっ…

 が、しかし。

 国が、主務官庁が公益法人を指導・監督する上で、収支計算書の作成は引き続き行うものとしてしまったために、「一取引二仕訳」はなくなりましたが、「一取引で二系統の仕訳」は残ることとなってしまいました・・・。

 しかも、主務官庁の関与がなくなる、新制度の施行後においても、公益社団・財団法人については、認定の要件として収支計算書の作成を義務付ける可能性が濃厚です・・・。

 つまり公益法人は、永遠に収支計算書の作成が続いていくことになります・・・

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