3万を超えたNPO法人に寄せて
特定非営利活動法人(いわゆるNPO法人)の数が3万を突破しました。
いや、正確に言うと、3万を超えたのは、所轄庁によってNPO法人の設立認証をされた数であって、存在するNPO法人の数ではありません。
1月31日までの全国の累計で、設立申請の受理件数32,050、認証数30,257、不認証数338、解散数1,052(うち認証を取り消されたもの81)という数字です。単純計算すると、おそらく認証数から解散数を差し引いた29,205が、一応存在するNPO法人の数ということになるでしょうか。
設立の根拠となる特定非営利活動促進法(いわゆるNPO法)の、1998(平成10)年12月の施行から、丸8年と2ヶ月、毎月約300件(29,205÷98ヶ月)という、驚異的なペースでNPO法人の数は増加してきたことになります。
4年ほど前の2003年の同じ時期に、NPO法人の数が1万を超えたときは、月に約200件弱の増加ペースでした。その後、増加のペースはいっそう加速度を増しているということが言えるでしょう。
NPO法人の数が1万を超えたときに、筆者は編集していた公益法人向けの雑誌に「1万を超えたNPO法人に寄せて」と題したコラムを執筆しましたが、NPO法人を取り巻く状況は、残念ながら(でもないですが)その時とそれほど大きくは変わっていないのではないかとも思われます。今回はその辺をなぞりながら、NPOへ寄せる思いを述べたいと思います。
NPO法人の数は、110年前に発足した公益法人(社団法人・財団法人)、第二次大戦後に発足した社会福祉法人の数を、わずか8年ほどであっさりと追い抜いてしまいました。驚異的なペースで増加してきたことは、NPOの果たす社会的役割に対する期待が急速に高まり、今やわが国の新たな社会の担い手としての地位がすでに確立していることを示すものに他なりません。
しかし一方で、NPO法人への期待・人気が高まるにつれて、問題点も次々に明るみになってきました。
2003年のころは、学生や、転職を希望する社会人の間で新たな就職先としてNPOが注目されていましたが、まだ世の中不景気の真っ只中で、企業・個人が社会貢献にまわすほどの資金的余裕はほとんどなく、国や自治体も財政悪化により補助金等の支出を切り詰めている状況だったので、NPO法人でも(もちろん公益法人でも)会員など資金面の支援者(寄付者)が大幅に減少して、もともと財政基盤が脆弱なNPO法人は深刻な資金不足に陥っている様子がよく報道されていました。NPOに就職しても、まともな収入が得られるのはほんのわずかで、大多数は、その活動の専門性から高い能力を必要とされていながら、その給与は世間一般よりもかなり低い状況でした。
今は、大企業を中心に景気が回復傾向にあり、就職氷河期も終わり、団塊世代の大量退職という2007年問題も相俟って、就職戦線は売り手市場、企業も待遇アップで大幅な採用増に乗り出しているので、NPO法人はどこ吹く風、就職先としてのNPO法人などという報道はぱったり見なくなってしまいました。
わが国では“寄付文化”は何かと等閑視されがちですが、この寄付文化を醸成するためには、税制面と、もっと手軽に寄付ができるような仕組みといった環境面での整備が必要です。しかし税制面では、ほんの一部の自治体で「1%寄付」のような試みがなされてはいるものの、ほとんどと言っていいほど見直しされていません。また手軽に寄付ができる仕組みも、4年前と比べて、ほとんど変わらず、最近やっと、例えばマイクロソフトがNPOの支援に乗り出したり、インターネットを使用した仕組みが開発され始めているということを耳にする程度です。
寄附者にとっては、その団体の活動内容や財務諸表の報告が寄付に際しての重要な判断要素となるわけですが、会費や寄付金といった善意の資金を集めるための情報公開や報告のあり方については、NPO法人の数が3万を超えてなお、未だに会計基準すらなく、やっと今会計基準を作るべきかどうかについて検討が行われているといった状況です。
一方、NPO法人を制度的に発展させていくためには、法人・組織の中核となる人材の募集・育成も重要事項の一つであります。そのためには最低限の待遇や教育費用が必要なのは当然のことで、その費用は団体の基本的な維持費であり、利益の分配とは異質のものでありますが、この点に関しての社会の理解が非常に薄いのも、4年前と全くと言っていいほど変化が感じられません。
NPOが社会で評価されるメルクマール(指標)は、その行う事業を通しての“社会貢献性”です。
「何のために」という使命こそが、NPOの存在意義に他ならないのですが、その高いミッション(使命)を果たし、理想を実現するためのモチベーションを持続するために、もう一つの側面として高度な経営感覚も必要とされることは、永遠に変わることはありません。
数は増え続けていますが、未だ制度草創期の混乱の中にあり、厳しい現実に突き当たっているこの難局を、NPOの人たちが使命を果たすという志を失わず、何とか乗り越えてゆくことを、期待してやみません。
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