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2007年2月の記事

2007年2月26日 (月)

NPOでサラリー生活、いいじゃありませんか

 NPOという言葉は、人々に誤解を与えることがしばしばあります。そのひとつが、NPOで働く人たちの報酬の問題です。

 NPOは、多くのボランティアの人たちによって支えられている組織であることは事実です。しかし、そもそも、ボランティア(volunteer)の言葉の意味は、日本では「無償の奉仕活動」という意味をもつ、またはイメージをすることが多いのですが、英語の辞書を紐解いてみますと、「志願者、有志、自発的な、自ら進んでする」などの訳が出てくるだけで、「無償」といった文字は出てきません。つまり、ボランティアとは本来、あくまでも自発的な行為のことを指すのであって、無償であるか、有償であるかは問題とはならないのです。

 NPOと言えどもひとつの組織であって、組織である以上は、継続的に維持・運営していかなければなりません。ボランティア活動をするにしても、そのボランティアを集め一定の規律の上に活動を行わせ、集まった寄付金を管理したり、様々な文書を作成したり、社員総会や理事会を開催したりするためには、そのための人材が必要になってきます。それも理事の方たちや構成員である社員の方々が無償でできる範囲のうちはいいのですが、社員の人数や扱う金銭の額など、その活動や組織の大きさが一定の規模を超えてくると、責任も重大になり、限られた人たちではやっていけなくなってしまいます。そうすると、職員を雇用して日常的にNPOの活動を維持・管理運営していくための事務を行い、理事が常駐で事務を管理することが必要になってきます。そのようなときには当然、無給というわけにはいかず、その事務の量や質、責任の大きさに応じた報酬を払わなければならなくなるのはごく当たり前のことです。

 NPOは言うまでもなく非営利の組織で、剰余金を分配することは許されませんが、このような理事や職員への報酬は、決して剰余金の分配ではなく、組織を維持・管理するための必要経費に他なりません。

 5年ほど前、長引く景気低迷により寄付金などの資金が集まらず、NGOやNPOの財政にも深刻な影響を与えていたとき、その財政難の実情がいくつか報道されていました。就職難の学生の新たな就職先として注目を集めだしていたNPOでしたが、ある国際的な活動を行うNPO法人では、職員採用の条件として、英語が堪能であることを挙げていたものの、給与は15万円ほどだったという記事を読んだ記憶があります。給与は当然、その組織の財政力にも左右されます。NPOやNGO、公益法人といった非営利の組織では、その性質上、一般企業が必要とする能力以上の能力を必要とされることもたびたびあります。しかし、財政的に余裕がない組織も非常に多いです。一般企業でも同じではあるでしょうが、その能力や責任に見合った報酬の問題は、NPOの抱える大きな課題のひとつであって、まず何よりも、世間一般がこのことについて誤解せずに理解を深めることが大前提です。

 最近、ある人から、ある公益法人の指導を行っている会社が、発行する月刊誌の編集後記で、「NPO法人でサラリー生活を送ろうとは、心得違いも甚だしい」というようなことを書いていたということを耳にしましたが、このようなことを書かれるのは非常に心外で、これこそ誤解も甚だしいのではないかと思いました。仮初めにも公益法人の指導をしている会社が、このようなことを言えば、その影響は大きいはずです。この公益法人の指導をしている会社が本当に公益法人のことを理解しているのか疑問に思いますし、このような思い込みや誤解が広まらないことを切に祈ります。

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2007年2月19日 (月)

社団法人(業界団体)の公益性

 今般の公益法人改革が行われた背景には、公益法人に対するさまざまな批判があるのですが、そのひとつに、業界団体が社団法人として存在することに対する批判があります。

 構成員と便益を受ける受益者が同一であり、構成員間の連絡や親睦といった、いわば業界の発展や振興を第一の目的としているのだから、業界団体が社団法人を名乗るのはおかしい、非営利ではあっても、それは共益性しか有しておらず、業界団体は決して公益法人とはいえないのではないか、というものです。

 確かに、ここ数年来数多く摘発されている談合事件ひとつとってみても、談合で得をするのはその業界や業者だけなのですが、談合の話し合いが社団法人も含めた業界団体の内部で執り行われているケースが多く、まさに業界団体が談合の温床のひとつとなっているのは事実です。

 また、社団法人は政治活動を行えないことから、傘下に政治団体をつくり、政治家とつながって汚職事件に絡む事例もあります。

 さらに、最近起きた鳥インフルエンザでは、既に一般に認知されていることもあって、ほどなく適切な対応がとられ、被害は拡大しませんでしたが、鳥インフルエンザが日本で猛威を振るい始めた3年ほど前に京都府で鳥インフルエンザが発生したときには、その養鶏会社が事態の深刻さに慄いて発生を隠蔽してしまい、対応が遅れ、社会に多大な影響が及んでしまいました。その養鶏会社の会長は、社団法人である業界団体の副会長も務めていましたが、業界団体の役員としての指導性は発揮されず、自ら隠蔽行為をしたことで業界団体の副会長の職を解任され、責任の重大さに思いつめて夫婦ともども自殺をしていまい、養鶏会社の社長を務めていた息子は家畜伝染病予防法違反の疑いで逮捕・起訴され、会社は廃業という、誠に痛ましい出来事もありました。

 これらの事実を見る限り、その構成員と受益者が同一である業界団体には、いわゆる共益性はあっても、公益性というものはないように思えてしまいます。

 しかしながら、業界団体が、中には国や自治体など行政の意向もあったかも知れませんが、その活動を通して業界の秩序を保つことによって、永く社会の安定に寄与してきたことも、紛れもない事実でありましょう。目には見えませんが、業界団体の活動によって私たちの社会が受けている恩恵は、決して小さくはないはずです。そのような効果が発揮される限り、業界団体が公益性を有していることは疑うべくもありません。

 ほんの一例ですが、しばらく前、社団法人全日本トラック協会が各都道府県のトラック協会との連名で、新聞紙の1ページを丸々使って広告を出し、私たちに「トラックが今、非常事態」「トラックが止まると、暮らしは止まる」「安心・安全な輸送を維持するために、適正な運賃が必要であることをご理解ください。」と訴えていました(平成17年10月9日付読売新聞など)。その広告によれば、国内貨物の90%以上をトラック輸送が担っていて、国民生活を支えているが、運賃切り下げなどの諸々の負担にあえぎ、廃業するトラック輸送業者が少なくないとのことでした。広告を出すには、新聞社に払う広告代のほか、広告制作料などがかかりますが、このような国民への理解を促す活動は、トラック業界だけではなく、ひいては国民生活の安定にもつながるものと言えます。最初に示した悪い事例は、全体からするとほんの一部のものであって、業界団体の圧倒的多数は、このような活動を日々積み重ねています。

 つまり、問題なのは、業界団体の行う活動の内容であって、業界団体そのものに公益性がないのではなく、業界団体がその内在する公益性を発揮しているかどうかなのではないでしょうか。

 公益法人制度の改革によって、公益法人(社団法人・財団法人)は、公益性の有無によって公益社団法人・公益財団法人と一般社団法人・一般財団法人に分けられることになります。もちろん組織面でもそうですが、公益性の有無とは、公益性を発揮する活動をしているかどうかがまず第一義になります。

 これは筆者の業界団体に対する希望ですが、このたびの不二家の問題をはじめとして、以前起きた雪印食品、BSEの牛肉偽装事件、三菱自動車のリコール隠し、カネボウや日興コーディアル証券の粉飾決算などは、一私企業の不祥事ではありますが、決してそれだけで済む問題ではなく、業界全体への不信感が広がっていることは否定できません。どれも、一般の人々には考えられないような出来事ばかりのように思えます。このような問題が二度と起こらないよう、常に危機意識を持ち、不祥事への取り組み、企業倫理の確立などに関して、業界団体としての指導性(リーダーシップ)を、今以上に発揮していただきたいと思います。

 

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2007年2月14日 (水)

NPOの会計基準ができるのは時間の問題なのでは

 昨年11月3日の日本経済新聞朝刊の1面に、「NPOの会計基準統一 内閣府2008年度にも 企業並み透明性」と題した記事が掲載されました。

 記事の主な内容は、内閣府は2008年度を目処にNPOの会計基準を統一する方向を固めた。その目的は、透明性の高い会計基準を作ることによって各法人の財務内容が容易に比較できるようになることで不正行為を排除し、個人や企業が寄付をしやすくするとともに優遇税制の認定を受けやすくすることによってNPOの財政基盤を強化して裾野の拡大を図ることである。この会計基準は複式簿記を原則として貸借対照表と損益計算書を作成するもので、来年中に民間の専門家を加えた研究会で基準案をまとめて、2008年度の導入を目指すが、適用の義務化はしないといったものでした。

 ある団体のホームページでは、この新聞記事について内閣府に確認したところ、担当者は事実無根と返答し、「現在、内閣府は、国民生活審議会総合企画部会NPO法人制度検討委員会において、NPO法人制度について幅広く議論を重ねているところで、会計基準を統一化することは考えておらず、研究会を立ち上げる予定もない」とのコメントを紹介していました。

 しかしながら、その団体のホームページでも紹介していたように、また上記のコメントにもあるように、現在内閣府ではNPO法人制度検討委員会を立ち上げて、会計基準に限らずNPO法人制度全般の問題点の整理や見直しをしている真っ最中で、委員会が昨年発表した中間報告では、「2.法人の業務運営のあり方 (5)会計基準及び計算書類のあり方」の中で、「各法人の会計処理の目安となる会計基準が策定されることが適当である」と述べています。また、中間報告に対して寄せられたパブリックコメント(一般からの意見)は、会計基準が策定されることを前提として会計基準の内容についての意見がほとんどでしたし、さらにパブコメを募集した後、昨年11月に開催した委員会でも、会計基準については委員会の方でもすでに話し合われており、基準は一つ作ればよいのか、規模に応じて違う基準を作れば良いのか議論がなされたとしています。

 しかるに、NPOの会計基準の報道は、あながち嘘でもないのではないかと、その報道を読んだとき思ったのでした。

 そもそも、この現代において、その会計処理の拠り所となる原則や基準がない法人主体が存在すること自体、普通に考えてもおかしいと思うし、ましてや社会貢献活動を行いその資金調達のために市民や企業、自治体や国から理解されて援助を受けなければならない団体にあってはなおさらのことであるのは言うまでもないのではないかと思います。

 筆者のイメージでは、制度創設の後早々に会計基準が策定されてしかるべきで、本来ならば、現在は、NPOの実態を踏まえてよりNPOに適した形の会計基準への改正のための検討がなされているべきだったのではないかと、ふと思うのですが、現実はなかなかそうはならないもののようです。

 現在NPOの会計については、法律ではただ収支計算書と貸借対照表・財産目録の作成と、特定非営利活動以外の事業を行っている場合の区分経理が義務付けられ、会計の原則として正規の簿記・真実性・明瞭性・継続性の原則が謳われているのみです。正規の簿記の原則については、必ずしも複式簿記でなくてもよいと考えられているようなので、単式簿記で記帳している事例もあるやに聞いています。会計の詳細については、内閣府が作成している「NPO法人の管理・運営の手引き」の中で、収支計算書・貸借対照表・財産目録の様式とその説明が記述されていますが、それだけでは減価償却はしているのかしていないのか、資産の評価基準や評価方法はどうなっているのか、引当金はどのような基準によって計上しているのかといったことは、全くわかりません。以前は、もう少し親切に説明され計算書類の注記や勘定科目の例などが示されていた、旧経済企画庁が作成した会計の手引きがあり、内閣府のホームページから見れましたが、今はどこを探しても見つかりません。

 何しろ、NPO法人は制度の創設から8年余りで、法人の設立数は100年以上の歴史のある公益法人(社団法人、財団法人。現在約2万5千)や戦後に創設された社会福祉法人(現在約2万近くあるのではないかと思われます)を軽く抜き去り、すでに3万を超えている現状です。今はまだ、NPOというイメージで救われているところがありますが、すでにNPO法人相互である程度の比較・検証が必要な場面というのは、かなり発生しているのではないかと考えられます。このような中、上記のような、いかような処理をしても許される、さらにどのような処理をしているのかよく分からないような手引きだけでは立ち行かなくなっているのは、容易に想像できます。

 前述した内閣府のNPO法人制度検討委員会は今年の秋に活動の区切りをつけるので、おそらくそのときに何らかの活動報告がなされ、その報告書の中で、NPOの会計基準について中間報告よりかなり踏み込んだ内容が記されるのではないかと大いに予想できます。どこまで会計基準の内容に踏み込むかは、最終報告が出されるまで分かりませんが、議論の経過を見守り、またこのブログで触れる機会があれば、お話したいと思います。

 

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